世界の主要蒸留酒(専用記事)の陰に、各地域が育んだ個性派の蒸留酒が数多くあります。北欧のアクアヴィット、イタリアのグラッパ、東欧の果実蒸留酒——これらを知ると、蒸留という人類の技の多様さが見えてくる。ウイスキーとの接点も探りながら、世界の個性派蒸留酒を紹介します。蒸留酒の地図の、隅々まで旅する回です。

01 グラッパ — イタリアの搾りかすの酒

グラッパは、イタリアの蒸留酒です。ユニークなのは原料——ワインを造った後のぶどうの搾りかす(果皮や種)を蒸留する。「捨てる部分から酒を造る」という、無駄のない発想の産物。ブランデー(ぶどうのワインを蒸留・専用記事)の親戚ですが、搾りかす由来ゆえの独特の力強さと個性がある。熟成させないクリアなものから、樽熟成した琥珀色のものまで。食後酒として、またエスプレッソに垂らす(カフェ・コレット)などの楽しみ方も。搾りかすを活かす発想は、ウイスキーの副産物活用(専用記事)にも通じる、資源を大切にする蒸留文化です。

02 世界の果実蒸留酒

世界には、各地の果実から造る蒸留酒が無数にあります。東欧のスリヴォヴィッツ(すもも)、ドイツ・アルザスのオードヴィー(各種果実)、フランスのカルヴァドス(りんご・ブランデーの一種)、バルカン半島のラキア——その土地で採れる果実を蒸留する、地域密着の酒。これらは、ウイスキーのような世界的知名度はないものの、その土地の風土と食文化に深く根ざしている。ドイツの農家蒸溜所(専用記事の大陸欧州)がこうした果実蒸留酒の伝統を持ち、それがウイスキー参入の基盤になった例もある。世界中に、その土地ならではの「命の水」があるのです。

03 蒸留酒の多様性を知る

アクアヴィット、グラッパ、各地の果実蒸留酒——これらを知ると、蒸留という技術が世界中でいかに多様に花開いたかが実感できます。原料はその土地の恵み(穀物、ぶどう、果実、搾りかす)、香りづけや熟成はその土地の文化。ウイスキーは、その広大な蒸留酒の世界の、一つの完成形。他の蒸留酒を知ることで、ウイスキーの個性も、蒸留酒全体の豊かさも見えてくる。旅先でその土地の蒸留酒に出会ったら、「これもウイスキーの遠い親戚」と思って味わってみてください。命の水は、世界中の土地に、それぞれの形で湧いているのです。