ウイスキーづくりでは、酒になるのは原料のごく一部で、残りは大量の副産物になります。麦芽の搾りかす、蒸溜後の廃液——これらをどう処理するかは、実は蒸溜所経営の重要な一部。「捨てない」ための巧妙な循環システムを覗いてみましょう。

01 麦芽かす(ドラフ) — 牛の御馳走

糖化を終えた麦芽の搾りかすは「ドラフ」と呼ばれます。糖は抜けていますが、タンパク質や繊維が豊富に残っている——これが優れた家畜飼料になります。スコットランドでは、蒸溜所のドラフが近隣の牧場の牛に供給される循環が古くから確立していて、「ウイスキーの副産物が、地元の牛乳や牛肉になる」という地域経済の環が回っています。捨てればゴミ、活かせば資源。ドラフは、蒸溜所と農業を結ぶ、栄養豊かな架け橋なのです。

02 なぜ副産物処理が重要なのか

副産物の量は、製品の何倍にもなります。だから、その処理は環境負荷と経営コストの両面で無視できない。適切に処理しなければ、河川汚染や悪臭の原因になり、地域との関係を損なう。逆に、うまく循環させれば、飼料や燃料として収益や自給に貢献し、環境認証やブランド価値にもつながる。「ウイスキーづくりのうまさ」は、酒の味だけでなく、この副産物をいかに無駄なく循環させるかという総合力にも表れる——現代の蒸溜所評価の、隠れた一項目です。

03 飲み手の視点

この循環を知ると、一杯のウイスキーが「地域の生態系の一部」であることが見えてきます。あなたが飲む酒の副産物は、どこかの牛の餌になり、蒸溜所の熱になり、畑の肥料になっている。ウイスキーづくりは、酒を作るだけの営みではなく、麦の一粒を無駄なく使い切る循環の営みでもあるのです。持続可能性が問われる時代、この「捨てない知恵」は、ウイスキーという伝統産業の誇るべき一面。グラスの外まで広がる、麦の一生に思いを馳せてみてください。