ウイスキーのフィニッシュに使われる酒精強化ワイン樽は、シェリーとポートだけではありません。マデイラ、マルサラ、モスカテル——南欧と大西洋の島々が生んだ甘い酒の樽が、それぞれ独特の陽だまりのような香味を授けます。少し通好みの樽たちを紹介します。
01 マルサラ — シチリアの琥珀
マルサラは、イタリア・シチリア島の酒精強化ワインです。ティラミスの材料としても知られるこの甘い酒の樽は、ウイスキーにアーモンド、蜂蜜、ドライイチジクのような地中海的な甘みを添えます。使用例はまだ多くありませんが、クラフト蒸溜所やインディペンデントボトラーの実験作で見かけるようになりました。シチリアの太陽を思わせる、明るく甘い個性です。
02 モスカテルと広がる樽の宇宙
他にも、マスカット由来の甘美なモスカテル(スペイン・ポルトガルの甘口ワイン)樽、ソーテルヌ(フランスの貴腐ワイン)樽など、甘口ワインの樽フィニッシュは百花繚乱です。共通するのは「甘く華やかな上塗り」ですが、元のワインの性格によって、蜂蜜寄り・果実寄り・カラメル寄りと方向が微妙に分岐します。この多様性は、ウイスキーが「世界中の酒文化の樽を借りられる」という懐の深さの表れ——樽の宇宙は、ワインの世界と地続きなのです。
03 見つけたら試す価値
これらの樽フィニッシュは定番棚には少なく、限定品やクラフト、ボトラーズもので出会うことが多いもの。もし「マデイラフィニッシュ」の一本を見つけたら、それは造り手の探究心の証です。シェリーとポートで甘やか系の基礎を学んだ後、これらの通好みの樽に進むと、「甘み」という言葉の中にどれだけの表情があるかに驚かされます。南欧の陽だまりを、グラスの中に閉じ込めた一本です。