宮城県仙台市、二つの川に挟まれた美しい渓谷に、宮城峡蒸溜所はあります。竹鶴政孝(専用記事)が、力強い余市(専用記事)とは全く異なる個性を求めて、1969年に築いた二つ目の蒸溜所。蒸気間接蒸溜が生む、華やかで軽やかな味。余市と対をなす、ニッカのもう一つの表情を深く解説します。同じ創業者の、対照的な理想の物語です。
01 渓谷の地を選ぶ
竹鶴政孝が宮城峡を選んだ逸話は有名です。新川(にっかわ)と広瀬川が出会うこの渓谷を訪れた竹鶴は、その水でブラックニッカの水割りを飲み、水の良さに感動して即座に建設を決めたと伝わる。冷涼で霧が多く、湿潤なこの渓谷は、余市とはまた違う、繊細で華やかな原酒を育てる環境。余市が海の近くの力強さなら、宮城峡は渓谷の柔らかさ。竹鶴は、一つの個性に満足せず、対照的な二つ目の味を求めた。宮城峡は、その探究心が生んだ、ニッカの新しい表情なのです。
02 宮城峡の味
シングルモルト宮城峡の味は、華やかで、柔らかく、フルーティです。リンゴや洋梨を思わせる果実の香り、軽やかで滑らかな口当たり、穏やかな余韻。力強い余市とは対照的な、優美で親しみやすい個性。カフェ式連続式蒸溜機(専用記事)によるグレーンウイスキーも造られ、宮城峡はニッカの多彩さの拠点でもある。飲みやすく、それでいて上品——ウイスキー初心者(専用記事の入門コース)にも勧めやすい、開かれた味わい。渓谷の霧が育てた、柔らかな一杯なのです。
03 対照の美
宮城峡は、竹鶴政孝の探究心が生んだ、余市の対の存在です。海と渓谷、直火と蒸気、力強さと華やかさ——ニッカは、この対照的な二つの蒸溜所を持つことで、豊かな味の世界を築いた。一人の創業者が、正反対の二つの理想を追い、両方を実現した——これは、竹鶴の妥協なき探究心の証。余市と宮城峡を飲み比べれば、同じニッカの中にある、二つの全く違う魅力に驚くはず。対照的な二つがあってこそ、味は深まる——宮城峡は、その美しい実例。ぜひ、余市と並べて味わってみてください。