ハイランドと聞いて人が思い浮かべる風景——渓谷、清流、石造りの古い建物——を、最も手軽に体験できるのがパースシャー(南ハイランド)です。エディンバラやグラスゴーから車で1時間強。ハイランドの玄関口にあたるこの一帯には、観光と結びついた古豪が点在しています。
01 アバフェルディ — 蜂蜜の水の谷
テイ川支流の美しい谷に建つアバフェルディは、「蜂蜜のようなモルト」の代名詞です。デュワーズのキーモルトとして生まれた歴史を持ち(専用記事あり)、単体の12年は蜂蜜とヘザーの柔らかな甘さが素直に楽しめる佳作。併設の「デュワーズ・アバフェルディ蒸溜所」見学施設はブレンドの歴史博物館を兼ねており、「ブレンデッドとキーモルトの関係」を学ぶには最高の教室です。
02 ディーンストンと渓谷の仲間たち
南ハイランドには他にも、紡績工場を転用したユニークな出自のディーンストン(オーガニック製法への取り組みで知られ、映画『天使の分け前』のロケ地の一つ)、ハイランド最南端級のグレンゴイン(「スコットランドで最も美しい蒸溜所」を自称する無煙・ゆっくり蒸溜の丁寧派)などが並びます。どこも過剰な個性を競わず、「丁寧で、飲み飽きない」中庸の美学——都会から一番近いハイランドは、味も人懐こいのです。
03 家での旅
南ハイランドの夜は、アバフェルディ12年かグレンゴインの一本があれば十分です。蜂蜜、麦、穏やかな果実——強い主張はないのに、グラスが進む。この「いぶし銀の飲み飽きなさ」は、煙やシェリーの強豪を巡った後にこそ沁みる味です。スコットランド旅行の一日目に組み込みやすい産地でもあるので、いつかの旅の予習としてもどうぞ。